第六章 ポンコツ達のまったり海水浴

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  直人が食料を買ってきて、薄暗い浜辺で楽しいバーベキューが始まった。 リッシェルは混じって楽しんでいるが大半がお子様なこの状況の中、ヒロユキはどこか引率者のような気持ちになって居場所に困り、少し離れた所で見守っていた。 「ヒロユキさん、焼けたワケですよー」 「ヒロユキ、焼けたよー」 れんげとクロエが二人ほぼ同時に、焼けた肉や野菜を串に刺した物を皿に乗せて持ってきた。 「むっ」 クロエは睨んで、れんげは笑顔で二人して顔を見合わせて、ヒロユキの前で火花を散らす。 「おい、オレのが早かったぞ」 「そんなぁ、こういうのは、ヒロユキさんの気持ちですよ、ね、ヒロユキさん?」 なぜだか起きてしまった不毛な争いを前にヒロユキはただ面倒くさくて、 「どっちでもいいっての」 と仲間ってのもあってかクロエのを取ろうとすると、れんげが割って入って、 「どっちでもいいなら、あたしのでもいいと思うワケです、はい、どうぞー」 クロエはそんなれんげを体当たりで押しのけて、 「は?お前、バカなの?ヒロユキはオレのを取ろうとしたじゃん?ヒロユキはオレのが食べたいんだよなー?」 「いや、本当にどっちでも……」 ヒロユキが言おうとしたら、二人は目の前で顔がくっつくぐらいの距離で睨み合っていた。 「あたしのは、れんげ特製ソースがかかっててそれはもう美味しいワケですよ!愛も込めてたっくさん付けましたよ、ヒロユキさん」 「へっへーんだ、オレのだってクロエ特製ソースがかかっててめっちゃ美味いから!そっちの赤毛のより三倍美味いから!」 「むっ!だったらあたしのはクロエさんの三倍美味しい上、愛もあります!」 「オレだって愛ぐらいあるもんね!その上でお前の十倍美味いよ!」 「だったらあたしのもクロエさんの十倍美味しいですよ!」 「にゃにおう!」 「なんですか!」 まだ言い争いを続ける二人の前で自分の事なのに蚊帳の外にされてしまったヒロユキはポツリと呟いた。 「あかん、これは食べられへんヤツや……」 漫画やアニメにしか出てこないような美少女にモテて、もう四、五年遅く生まれていたらデレデレになっていたが、ヒロユキにとって二人はまだ子供で全く嬉しくないのだった。 「直人にもらいに行こう」 まだゴチャゴチャやってる二人を避けて、直人にもらいに行こうとしたら二人掛かりで右腕と左腕にしがみ付かれて、 「どこ行くんですかぁ?バーベキューなら美味しいのがここにあるワケですよ、はい、あーんしてー」 と右腕のれんげさん。 「しつこいぞ、お前、ヒロユキが困ってんだろ!オレのが美味いよ、オレのを食べなよ」 と左腕のクロエさん。 「近い近い!二人でバーベキューの串を俺の顔に押し当てるな!!って痛い痛い!!刺さってる刺さってるから!!」 振り払おうにも二人の力はめちゃくちゃ強くて振り払えない。 バーベキューの串は凶器である事を知ったヒロユキであった。  
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