第六章 ポンコツ達のまったり海水浴

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  飲み物と皿で両手が塞がった状態で進むには、なかなか足場が悪い足場にフラつきながらもヒロユキはコーネリアを探しに来ていた。 辺りもうっすらと薄暗くなっていて、視界が悪い中、目を凝らしてようやく疲れ果てて倒れているコーネリアを発見する。 「おっ、いたいた、おーい、コーネリア」 まだちょっと遠いが声をかけても返事がない。 もしかして、こんな場所で寝てるのか?と思った瞬間、例の寝相の悪さで、コーネリアが岩場から海へドボンと転落する。 「ちょま!んああああー!コーネリアー!!」 飲み物とバーベキューの皿を置いて、ヒロユキも直ぐ様、海へと飛び込む。 やっぱり寝ていたのか、気を失ったコーネリアを海中で見つけたヒロユキはその腕を掴んで海上へと上がっていく。 「ぷはあ!おい、起きろ、アホ!俺も他人抱えて泳ぐ程、泳ぎ得意じゃねーんだよ!」 「う……う〜ん……」 「だー!もう起きねー!!」 ヒロユキはぎこちないながらもコーネリアが溺れない様にパシャパシャ泳いで岩場を目指す。 「ぜーはー、ぜーはー、し、死ぬかと思った……」 なんとか岩場に戻り、横になったコーネリアの隣で荒々しい息を整えていると、コーネリアがパッチリと開いて、 「ヒロユキ……?」 「おう、おはようございます」 「なんでヒロユキが……」 コーネリアはしばらく考えてから顔を真っ赤に染めて、急に跳び退いて、身体のあちこちの無事を確認するように触って、 「つつつ、ついにやったわね!?やってしまったのね!?」 「いや、何をだよ!?」 「寝ている美しい私のあちこちを舐め回したんでしょ、ケダモノ!!三回死んで!!」 「数字が妙に生々しいからやめろぉ!!なんで海に飛び込んでまで助けたのにケダモノ扱いされにゃあならんのだ!?」 「えっ?えっ?海、に?」 「はあ、あのなぁ……」 まるで気付いていない様子の上、命の恩人に対してあんまりなこの扱いにイラつきながらもヒロユキはコーネリアに説明した。 「あは、あはははは……」 「笑ってないで、俺に言う事があるだろコノヤロウ」 「はい、本当にごめんなさいでした」 コーネリアの綺麗な土下座を見て、ヒロユキもなんとか機嫌を直した。 「これ」 せっかく持ってきたので、ヒロユキは不本意ながらもコーネリアの前に飲み物とバーベキューを差し出した。 「わざわざ、持ってきてくれたんだ……」 「そうだよ、わざわざ持ってきたのに、この扱いですわ!」 「それはもう謝ったじゃない、本当にごめんって!ありがたく頂戴します!」 「噛み締めて食えよ、俺のありがたみを!」 「わかった、わかった、噛み締めますって」 ヒロユキの機嫌を取るように苦笑いをして、コーネリアが一口バーベキューを口にする。 「美味しい……!何これ、誰が味付けしたの?」 「なんと、直人お坊っちゃんだ。今日、初めて料理したらしい」 「初めてでこの味!?どこまで天才なのよあの子……」 「本当、嫌になるよな、なんでも完璧にこなしやがって、嫌味も言えねえよ」 「本当よねえ」 この夜、二人は初めて心からの本当の笑顔を向かい合わせて、声を出して笑った。 二人きりでこういうのは、本当に久しぶりな気がして、二人して妙に嬉しくなっていた。     
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