第六章 ポンコツ達のまったり海水浴

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  ひと仕切り笑ったヒロユキは、何気なく気になる質問をコーネリアに向ける。 「んで、どうなんだ、れんげ師匠は?」 「うーん……これで大丈夫かなー?ってのはちょっとあるわ」 「と言うと?」 膝を抱えて座るコーネリアの隣に座ったヒロユキが尋ねると、コーネリアはため息混じりに、 「はあ、私も最初は魔導書読まされたり、精神修行みたいなのを想像していたんだけど、まさか走り込みとはね……」 うんざりした様子のコーネリアにヒロユキは苦笑いを返して、 「あれじゃないのか?健全な肉体には健全な精神が宿る的な?」 「そうよ、それ!れんげ師匠も言っていたわ!『コー姉は魔力以前に体力も何もかもが無さ過ぎなワケよ、体力が無いと何も出来ないワケ、というワケで走り込みなワケよ』ってワケワケうるさいわぁ!」 後半、ちょっと発狂気味に言ったコーネリアにビックリして身を引いたヒロユキは、 「お、おう、それはワケワケうるさいな」 と下手に刺激しないようにワケがわからない同意をしておいた。 「大体、私、魔導師よ?体力なんていらないんじゃないの?私は楽して派手に活躍したいのよ!」 「おーい、コーネリアさーん、言ってる事が駄目人間のあれになってますよー」 「むー!ヒロユキならわかってくれると思ったのに」 「まあ、気持ちはわかるけどな、俺もそうだし」 「でしょ!」 基本、この二人はダメダメ、でよく似ているのだ。だからこそ、お互いの気持ちはよくわかる。 「でも、続けるんだよな?」 「うん……」 強くなると決めたコーネリアの決意は揺るがない。 ヒロユキもそれがわかっていて、微笑みを返す。 「どうせなら世界一強い魔導師になれよ、そしたら俺が楽出来るもの」 「バーカ!私が強くなるのは、全部、私の為よ、あんたの為じゃないんだからね!」 「今のちょっとツンデレっぽくていいわ、コーネリアたん萌」 場もわきまえずにそんな事を言うヒロユキにコーネリアはげんなりして、 「海に還すわよ」 「本当、すんませんっした!」 「ふふふ、許してあげる」 ヒロユキが頭を下げるとコーネリアは口元に手を当てて笑って、 「だって私はこんなにも、あんたに感謝してる」 「……か、感謝される覚えなんてないんだからねっ!」 「うわ……引くわ……ドン引きですわ……」 素直な感謝の気持ちを向けられると照れてどうしようもなくなった末のツンデレ返しだったが、ドン引きされてしまった。 「リアルなドン引きってここまで心に刺さる物なのですね……」 「あんたがムードぶち壊す事言うからよ!」 「うーん……」 だって、苦手なんだもの、とヒロユキが内心でそんな事を思っていると、コーネリアは両手をヒロユキの右手に添えて真剣な顔付きで語り出す。
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