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クロエのマッサージで全身の骨を砕かれて口から泡を吹いていたヒロユキを見かねて、嫌そうにではあるがリッシェルが治癒魔法をかけていた。
「ハッ!俺は一体……?」
「気が付きましたか、変態」
「ごめんなー、オレ、壊すのは得意なんだけど、マッサージとか初めてで……」
反省しているクロエの両肩に、ヒロユキは優しく手を置いて、
「いや、発想は悪くない!あとは力加減を覚えれば完璧だったぜ、クロエ!」
「ホント!?」
「あんな死にかけまで追い込まれてよく出てきますね、その台詞!変態は欲望がある限り死なないのですか!?」
あまりにもタフな変態を目の前にしたリッシェルがビックリしていると、ヒロユキはキラキラした素晴らしい笑顔を向けて、
「だから君がいるんじゃないか、リッシェルさん!」
「宛にするのはやめて下さい!全身の骨を治して、私の魔力は空っぽなんです、次は本当に死にますよ!?」
「なんだー、今日はもう駄目かー、また明日な、クロエ」
「うん!次は頑張るよ!」
「明日も変態のあと始末させられるんですか、私!?いっそターンアンデッドかけますよ!?」
「遂にゾンビ扱いですか……望む所だ!」
「こ、これは……変態に効く神聖魔法を開発するしかないようですね……」
リッシェルに呆れられてそんな事を言われているその隣で、クロエが頬に手をやっているのにヒロユキが気付く。
「なんだ?食い過ぎて虫歯にでもなったか?」
「ち、ちがわい!あのさ、ヒロユキ、あいつとなんかあった?」
「あ、あいつって?」
急に図星を突かれてビックリしたヒロユキは、心当たりがありまくるのに乾いた声で話をはぐらかそうとする。
「れんげさんですよ、ここに来るまでにすれ違ったのですが、クロエがずっと気にしていて」
「うーむー……」
リッシェルの言葉に唸りながら、ヒロユキの額から汗が流れる。この汗はきっと暑さのせいではない。
「ヒロユキが言いにくいならオレは……」
クロエが言いかけた所で、ヒロユキは割って入るように、
「いや、そこは気になるなら気になるって言えよ!コーネリアだってリッシェルさんだって俺に遠慮なんかしてねえだろ?」
「ぁ……うん……」
「ってなんでクロエに八つ当たりしてんだ俺はぁ!!」
いたたまれなくなって、ヒロユキが両手で頭を抱えて悩む。
そんな様子を見たリッシェルは、口に手を当てて少し笑って、
「ふふ……悩める子羊の懺悔ですか?聞いてあげますよ?これでも元シスターですから」
「いや、そのドヤ顔は純粋に腹立つから無理」
「なんでですか!私だってたまにはシスターっぽい事したいのに!!」
たまにはシスターっぽい事をしたかったリッシェルは秒でヒロユキに拒否られて、涙を流しながら怒鳴り散らしていたが、ヒロユキは両手で耳を塞いで聞かない意志を示していた。
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