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「ヒロユキはどうしたいですか?」
「どうしたいって、俺は別に……」
思わず口籠ってしまったヒロユキの前まで歩いて来たリッシェルはヒロユキの顔を見上げる。
「ほら、また目を反らす」
「な、何がだよ?」
「ヒロユキはいつもそうです。他人が苦手なんですよね、でも、優しいから放っておけない」
リッシェルに核心を射られたヒロユキは照れ臭くなって、目を反らしながら頬をポリポリと人差し指で引っ掻く。
「反論しない、という事は、イエスと受け取ってしまいますよ?」
「こっ恥ずかしい事をよくも真顔で言えるよな、リッシェルさんは」
「ヒロユキ、れんげさんときちんと話をしましたか?」
「……したけど?」
「本当に?今みたいに、はぐらかしはしませんでしたか?彼女は何かを言いたそうにしていませんでしたか?」
リッシェルに言われて、ヒロユキはれんげとの会話を思い返す。
「何か……言いたそうにしてたかも」
「思い込みは?彼女が自分で言ったのですか?私達を見張っていましたと、私達を信用していないと」
今、冷静にリッシェルの話を聞くと確かにそうだ。
頭に血が昇ってしまっていた。
思い込んでいた。
「いや、でも、そういうのって、本人からは言わないだろ、普通」
それを聞いたリッシェルはどこか安心したように微笑んで、
「そうですね、言わないかも知れません。でも思い込んでいましたよね?」
「まあ……そうかも……だー!もうなんなんだよ、リッシェルさん!俺が悪いのか?謝りにいけってか?」
「誰も悪い事などありません。なぜなら、それは誤解だからです、私はヒロユキを責めてはいませんよ?」
「わかってるよ、他人を一気に信用しないのは俺の悪いクセだ」
「そうですね、最初は私にも酷かったですもの」
「そうだね、オレには特に酷かった!」
悪戯っぽくクロエまで乱入して来たので、ヒロユキは焦りながらも、
「悪かったよ、ホント、悪かった!いや待て、クロエに関しては俺が悪いか?俺、タカられてなかった?」
「ギクッ!」
「ギクッ!じゃねえよ。なあ、飯タカろうとしてなかった?」
「まあまあ、そんな私達もこうして仲良くなれたんですよ」
クロエを睨むヒロユキに割って入って、リッシェルがここで一区切りして続ける。
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