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「チガウチガウ、コレ、ワタシシラナイ、ヒーヒーフー」
「なら、カタコトはやめろ、目を反らして吹けもしない口笛を吹こうとするな」
「なによ!私がやったっつう確たる証拠が何処にあるってのよ!?」
「お前の足元だよ」
「むきぃー!口の減らない人ね!」
ブロンズ髪の少女は地団駄みたいのを踏んでふと我に返って、
「ところであんた、名前は?」
「話題反らしてんじゃ……」
「名前わかんないと不便じゃない!ね!私、コーネリア、コーネリア=ウェイブライト」
ブロンズ髪の少女は緑色のジャケットの胸元に手を当てて勝手に自己紹介を始めてしまったので、ヒロユキも嫌々ながらに、
「若山裕之」
「ワカヤマ……ああ、パンジャ読みね、じゃあ、ヒロユキが名前ね」
「パンジャじゃなくてジャパン読みだよバカヤロー。それにお前、明らかに年下だろ、ヒロユキさんと呼びなさい」
「ジャパン?聞いたことないけど、私だってあんたにお前呼ばわりされる言われはないから!」
ちくしょうこの野郎!なんて生意気な小娘だよ、ちょっと可愛いからって調子にのりやがって!とヒロユキはムッとした表情で口元をヒクヒクさせながら、
「聞いたこと無いのも無理は無いだろ?だって異世界召喚?ってヤツなんだろ?」
「は?あんた何言って……」
「おい、ちょっと待て、まさか無自覚の事故とかじゃあるまいな!?」
「…………」
コーネリアと名乗った少女はしばらく黙って……
「あの……その……なんというか、あなたって……その……そこはかとなく素敵だと思うの!」
「誉めるところがないのに無理に誉めて誤魔化そうとするなコラ、事故か!?事故なんだな!?」
「あー、成る程、異世界かぁ……遠いわね、きっと……ど、どどどうしよう……!?」
コーネリアは汗だくになってテンパっている。
「そんなの俺が……」
聞きてえわ!と言いかけたヒロユキが何かに気付いた。
「ちょ、おま、まさかと思うが……」
土煙を上げて何かの集団がこっちに向かって来ている。
「あー……はい……すんませんっした……あんたにあんなのどうしようもないわよねー……うん、詰んだ。完全に詰みですわー」
コーネリアは既に諦めムードで吐き捨てた。
よく見ると犬の頭部に人間の身体をくっつけたような奴等が雄叫びをあげて走ってきていた。
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