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「見た感じ物凄く肉食感溢れる方々ですね、お知り合いですか?お友達とか?」
「んなワケないでしょう!?逃げるわよ!」
「馬鹿な……こんな馬鹿な!まだ初期装備も貰ってないのに戦闘イベントとかふざけんなバカヤロウ!!」
「ワケわかんない事言ってないで走って!」
コーネリアはヒロユキの手を引っ張って走り出した。
キチンと数えたワケではないが、わんこみたいな獣人たちは八から十人ぐらい。しかも各々にハンマーやらこん棒やら釘バットみたいな物まで持っている。
例え、人間が相手だったとしても血祭りフルコースである。それほどの戦力差である。
「ヒロユキ、あんた実はケンポーの達人だったり」
「しない」
「じゃあじゃあ、実は知略溢れる有能軍師だったり」
「しない」
「んわーん!もうなんでもいいからなんか奇跡的な力」
「そんなご都合主義はない」
そうヒロユキはいわば、ケンカした事すら無いような一般人である。ベンチブレスは20kgが限界だし、握力もせいぜい40ぐらいのなんなら一般人よりも駄目な一般人なのである。
「チッ……本当に使えないわね、このモブ顔が」
「おい、今なんつった?なんなら差し出すぞ?俺が助かる為にお前を差し出すぞ?」
「や、やめろぉー!私が悪かった話をしよう!」
そんな感じで猛ダッシュで逃げてはいるが、獣人の皆さんは生唾を吐きながらさながら親の仇でも見つけたかのように追跡してくる。
「大体、なんなんだあれは?」
「あれはコボルトつってね、行商の荷車とか襲っちゃう凶暴な奴等なの!」
「その凶暴な方々にわざわざ何したのお前!?」
「魔法ぶっぱしますた!!」
「よし、謝ってこい!」
ヒロユキはグイグイ押してコーネリアを引き剥がそうとするがコーネリアはヒロユキの腕にしがみついて放さない。
「はな、離せぇぇぇええー!!」
「お、女の子があんな野蛮な連中に襲われようとしてるのよ!?助けてくれたっていいじゃない!?」
「おま、ふざけんな!明らかにお前から喧嘩売ってましたやん!じゃあ、その魔法とやらをもう一回さっさとぶっ放せよ!」
「もう魔力無いもん!あんたを召喚するのとさっきのヒールで魔力無くなったんだもん!」
「もんじゃねえよ!どうすんだよ、これ!なんか転生ボーナスとかねえの、これ!?」
「ある!きっとあるわ!だからチャチャっといって片付けて来て!!」
「嘘つけぇ!?囮だろ!?囮にしててめえだけ逃げるつもりかポンコツ女!!」
「誰がポンコツよ!大体、あんたが役立たずなのが駄目なんでしょ!?魔力返しなさいよモブ顔召喚獣!!」
「またモブ顔って言いやがった!コボルトの皆さーん!こいつは大人しく差し出すのでここは穏便に俺だけ逃がしてくださーい!!」
「ちょ、まっ!!コボルトの皆さーん、こいつの方がきっと美味しいんでこいつ差し出しまーす!!だから私の事は許して下さーい!!」
あーだこーだと言って足の引っ張り合いをしている内にコボルトたちは、みるみる内にヒロユキたちに追い付いてくる。
「あわわわ!絶対こいつのが柔らかくて美味いので見逃してぇー!!」
「絶対私よりこいつのが歯応えあって腹持ちいいからぁー!!」
「「ぎゃぁぁぁぁぁあああああーーー!!!!」」
二人の涙ながらの命乞いも虚しく、二人仲良くコボルトたちにフルボッコにされるのであった。
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