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コボルトの群れにボコられた二人はどこかで拾った長い木の枝を杖代わりになんとか近くの町にたどり着いていた。
「異世界召喚された途端にこれですわ……」
「自分でもなんで生きてるのかわかんない……」
コーネリアの言う通り、二人してズタボロのボロクソにされて、HPなんて概念があるとするなら残り1ぐらいに成り果てていた。
「私、ちょっとギルドに行かなきゃなんないんだけど、あんたどうする?」
「ギルド!じゃあ、コーネリアは冒険者みたいな職業なのか?」
まあ、今、ヒロユキの目の前にいるボロクズみたいな女をそう呼ぶのは些か抵抗を覚えたが。
「冒険者って何?」
杖越しに振り向いて、疲れた顔でコーネリアが聞き返すと、ヒロユキは身ぶり手ぶりを交えて、
「ほら?さっきみたいなモンスター?クリーチャー?を倒しながら魔物に苦しめられている人々を助けたり、魔王を倒したり」
コーネリアはトボトボ歩く足を止めて、心底馬鹿にしたように、ハッ……と鼻先で笑って、
「伝説の戦士のおとぎ話じゃあるまいし……実はヒロユキってお子ちゃまだったの?」
「俺のいた世界じゃ割と定番って感じの設定なんだよちくしょう!大体、お前何歳なんだ?絶対年下だろ?」
「十六。そういうあんたは?」
「十八だよ、ほれみろ!今度からさん付けな!」
「いやよ、モブ顔にさん付けとか」
「モブ顔言うな」
町並みは中世を彷彿とさせる建物が並び建っていて、そこまで大きくもなく小さくもない町といった具合。
木造のバーといった雰囲気の建物の前でコーネリアは足を止めてフハァ~っと深いため息をついた。
「どうした?」
「……実は私、田舎から出てきたばっかりのツヴァイサーなんだけど」
「ツヴァイザー?」
「ツヴァイサー!まあ、簡単に言うとさっきみたいな魔物を倒してお金貰えるお仕事よ」
「やっぱり冒険者みたいなもんだな、で、お前はこれから失敗報告をしに行かねばならない、と」
ヒロユキがニヤニヤしながら言うとコーネリアは肩を落としてもう一度深いため息を吐いて、
「あんた、あとで覚えてなさいよ」
半泣きでギルドとやらに向かうコーネリアに続いてヒロユキも入っていった。
中はそれなりに広く、テーブルには冒険者のような出で立ちの人たちが酒を飲んだり、食事をしたりしている。
コーネリアについていくと、奥のカウンターの前で足を止めた。カウンターの奥には綺麗系のお姉さんがいて、
「あら、コーネリアさん、お帰りなさい。クエストはどうでした?」
「な、なんというか……し、失敗しました!!すんませんっしたぁぁぁーー!!」
それは、それは類稀にみる見事な土下座でありました。
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