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「またですか」
お姉さんはすごいニッコリしながら手を出して、
「あっはい……違約金ですね……」
「はい、三百ラピスになります」
コーネリアは財布らしき物を出してチャリチャリとコインを支払っていた。そんな様子を伺っていたヒロユキは思った。
すっごく惨めだ、と。
テーブル席に場所を移す事になって、お見合いみたいにして向き合って座った。
二人の前には無料サービスの水が入ったコップが店員さんによって置かれていた。
「ま、まあ、なんだ、その、元気だせよ?なんか頼むか?おー、すげえ、異世界なのに文字って解るもんなんだなー、書くのは無理そうだけど」
うつ向いて何も喋らなくなったコーネリアに沈黙に耐えきれなくなったヒロユキが場を和ませようとするが、コーネリアの様子は依然深刻なままで、
「いらない……お金なんて無いから」
「あっ、そ、そう?」
と遠慮気味にヒロユキはメニューをテーブルに戻した。
「し、失敗なんて誰にでもあるさ!言うだろ?失敗は成功の母!って」
なんとかさっきの威勢を取り戻させようと励ましてみるヒロユキだったが、コーネリアはうぅっと涙を流して、
「だってだって!もうこれで五回目だもん!五回中、五回失敗だもん!私なんか、私なんかぁ~」
「うおおい!泣くなって!落ち着け、一旦落ち着け!俺が泣かした感じになってるから!」
周りからやだあの男とか最低ねとかヒソヒソ声で聞こえて来ているのにコーネリアはテーブルに突伏したままわんわん泣いて、
「昨日なんてさ、強力な召喚が出来るスキルブックだなんていうから五百ラピスも払ったのよ?なのに出てきたのはなんにもならないただのモブ顔!!どーしてこーなるのよぉー!!」
「おいぃー!!さらっと俺をディスるんじゃねえよ!」
「ねえ、返して!五百ラピスと私の魔力返してよぉー!!」
「あれぇー!?なんでお前が被害者ヅラしてるの!?被害者、俺なんですけど!?!?」
また店の連中からヒソヒソと声が聞こえる。
「女の子からお金巻き上げるとかクソね」
「おまけに泣かして謝りもしないなんてカスね」
「男して以前に人としてクズね」
なんか、周りにドンドン悪評(しかも冤罪)が拡がってってるのですが……とヒロユキの額から滝のように汗が流れ落ちる。
「よ、よーし、わかった!今日の所は宿屋?とかに泊まってまた明日から頑張ろう!?な!?なっ!?」
「グス……今日の宿代も無いもん……」
「おーけぇー!!宿代を稼ぎに行こう、話はそれからだ!俺も手伝う!手伝うから!!」
「本当?また私を見捨てて逃げない?」
「逃げない!つーか、それ以上はガチでやめろ!!わざとか!?」
また店がざわつき始めたので適当にクエストボードらしき所から採集クエストっぽい物を選んだヒロユキはそそくさとコーネリアの手を引っ張ってギルドを立ち去った。
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