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「あのー、すいませーん」
「ああ、コーネリアさん、お疲れ様です。会計出来ていますよ」
受付のお姉さんはトレイのような物を差し出して、
「薬草956点、毒消し草31点に凄いですね、万能エリク草1点で締めて98730ラピスですね」
コーネリアとヒロユキは目玉が飛び出しそうなぐらいにビックリして、
「や、約十万ラピス!?!?」
「薬草クエ美味すぎじゃねえの!?どうして!?」
「こちらは薬草に良く似ているんですが、万能エリク草と申しまして、大変希少な物なので一点五万ラピスで取引させていただきましたよ」
ヒロユキとコーネリアはなんとも言えない嬉しそうな顔を見合わせて、
「いよっしゃぁぁぁああー!!!やったね、ヒロユキ!」
「わー、こらこら抱きつくなっつーの!」
コーネリアは思いっきりガッツポーズをしてヒロユキに飛びついたが女の子に免疫の無いヒロユキは照れくさそうに顔を真っ赤にしてこれを引き剥がした。
「これで質屋に出してるロッドを取り戻せるわ!ロッドさえあれば、私は超強いから期待してちょうだい!」
「金持った途端に急に頼もしいなー!」
異世界にも質屋とかあるんだ……とヒロユキが思っていると、
「ところでコーネリアさん、何かご用ですか?」
「ああ、そうだったわ。お姉さん、ちょっとこいつツヴァイサーに登録してちょうだい」
「登録ですね、かしこまりました少しお待ち下さい」
お姉さんはそういうと何やら奥の方へと向かっていった。
「これもあんたのおかげかもね、お礼に装備ぐらい買ってあげるわよ?」
「それは助かるなー、なんせ丸腰で魔物だらけの草原に行くのは危険過ぎるもんな」
なんて雑談に華を咲かせているとお姉さんがカウンターに戻ってきて、
「登録はそちらのお連れ様という事でよろしいですか?」
「ええ、お願い」
「では、お連れ様こちらの水晶に手をかざしてもらえますか?」
お姉さんが持ち出したなんか機械的な物が色々ついてる水晶玉にヒロユキは言われた通りに右手をかざしてみる。
ふふふ……わかっている……ここで普通なら俺の潜在的な何かが発覚してあれやこれやで魔王討伐の旅が始まるわけだな!?
とか思っているが水晶は全くと言って良い程に無反応である。
「あ、あれ?おかしいな、故障ですかね?」
コーネリアは不思議そうにヒロユキを見ていたがヒロユキにはオチが見えていた。
「この前代えたばかりの最新型なので壊れているはずは……」
と困った様子のお姉さん。
「オーラや魔力なんて赤ちゃんでもちょっとぐらい持っているはずなんですけど」
そう、そのオーラやら魔力とやらが、ヒロユキには全くないのだ。
お父さん、そしてお母さん。どうやら僕は、チートどころか、せっかく剣と魔法の世界に来たのに剣も魔法も使わせてはもらえないようです。
先行きが不安過ぎてヒロユキは静かに涙を流した。
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