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「あー、ごめん。帰宅部希望なんだ――」 「仮入部でいいから!暇な時にでも来てくれるだけで助かるから!」 両手を合わせて拝み倒してきた。まさかのごり押し。転校初日からされるとは思ってなかったよ。 この勢いからして、多分部員が足りなくなってきたとかだろう。三年生が居なくなって、一気に人数が激減したとかで。 というか男女別れてないのかよ。後ろの男子生徒は飾りか? とは言え、朱祢の事もある。夜道で女の1人歩きは危ないから、時間を合わせる為に入ってもいいかもしれない。暇潰し感覚で来ていいと言うのだから、それほど熱心にやらずともいいはずだ。 「まぁ、考えとく」 「前向きな検討を期待してるよ!」 元気一杯な別れを告げて取り巻きと共に席に戻っていく女子生徒。ふむ、あの子の席は廊下側前方か。 陸上少女と呼ぼう。名前聞いてないし。 陸上少女を見倣って、俺も少しは関わろうとするか。そう思って立ち上がり、取り敢えずは近くの生徒に声を掛けた。 英語の教科書とルーズリーフ一枚を貰った。やってみるもんである。尚、教科書は今週中に渡されるそうな。在庫がなかったようだ。 *** そんな感じで、教科書を借りてはルーズリーフを貰い昼休みの時間だ。 この学校には中庭なるものがあるそうだが、未だボッチな俺には縁のない場所である。 自前の弁当がある為、誰とも机をくっ付ける事なく1人黙々と弁当をパクつく。 例のクラスの中心的人物との関係だが、知り合いから踏み出せずにいる。だって会話に入り込む隙間がないんだよ。身内ネタが多すぎで殆ど聞き流してた。 何かの行事が始まれば事務的な会話から発展する事も出来るんだが、今暫くはそんな行事はない。 その内便所飯でもするんじゃないだろうか。
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