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二階を見上げると、位置関係のせいか俺を見下すように見つめる少女が一人。
多分玄関の鍵を開けただけの、照れ屋さんだったか。なら第一印象は大事だ。ここで警戒されよう物なら顔を合わせる度に気まずい空気が流れる。
出来るだけ柔らかい笑みと口調が硬くならない程度に意識しながら、取り敢えず挨拶をする事にした。
「こんにちは。今日から暫く世話になる。よろしく頼む」
駄目だった。超駄目だった。ダメダメだった。
出だしは普通なのに何故に後半が偉そうなんだよ。我ながら何故そうなった。
「……よろしく」
それだけ言うと、少女は踵を返し自分の部屋に入っていった。
ガチャバタンって音が聴こえただけだからどの部屋かは分からないが、取り敢えず上がろう。叔母さんを待たせてるだろうし。
「という訳で君の部屋はここ。まだ満足に掃除出来てないんだけどね」
「これで、まだ満足行く出来じゃないんですか」
開いたカーテンから差し込む太陽の光でフローリングの床が輝いている。一体この人は何処まで行けば満足するんだ。
奪い取られたトランクは既に中に入れられ、後は荷ほどきするだけでいい状態。何故勉強机にシングルベッドが完備されているのかは謎だ。
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