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使役
私は、操り人形。
主人の言い付けを忠実に守る操り人形。
用がある時以外は、家に閉じこもり、あまり陽に当たらない私は、透けるような青白い肌色をしている。
髪も永らく切っていないので、気付けば、腰くらい迄長く伸びている。
見兼ねた主人が先日、自宅に招き寄せたヘアスタイリストに髪を切り揃えさせた。
長さを変えず、ただ、切り揃えた。
彼は、ヘアスタイリストは、私を女性と勘違いをした様であった。
私をあまりに女性扱いするものだから、事実を教えたのだが、それを聞いた時の顔が忘れられない。
整った顔が、間抜けな表情になったのだから。
綺麗に整った髪を見た主人は、さも満足そうに笑んでいた。
主人は言った。
私の白い肌が、朱に染まるのが好きなのだと。
美しいのだと。
私には、解らない事であるが。
主人の思うまま。
主人の言うまま。
総てを為すのが私の仕事なのだから。
だから
この生活は、私には良いとか悪いとかではなく、当たり前の事なのである。
感情で動く訳にはいかないのである。
それは、私の勤めなのだから……。
しかし、それは、難しい事でもあった。
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