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部屋を出た世都の肌を、ひんやりとした空気が舐めた。
室内は温度を高めに設定してあるが、廊下は2月の気温のまま。まるで冷気が体にまとわり着く様だ。
世都は、戸外に誂(アツラ)えてある棚からローブを一枚出し、それを着た。
背中が擦れると、嫌な感じがする。
特に左腰。
まして、体調が思わしく無いので、蔦の部分はいつも腰で感じる痛みが走る。
腰の花はそれ以上に痛い。
廊下を歩き、目的の部屋の前へ行くとノックをした。
すると中から世都より背の高い、黒髪、黒目の男が扉を開けた。
「世都……」
「入っていい?瑶(ヨウ)さん」
そこは瑶の部屋らしかった。
広々とした明るい色調の部屋である。
瑶は世都を招き入れ、ソファーへと座らせた。そして、お茶の準備を始めた。
「世都、体調は?」
ドザールで茶葉を救いながらそう訊ねた。
「恢濫が、動けるようにしてくれた」
「恢濫が……。じゃあ、今、恢濫は」
言った瑶の言葉にコクリ、と頷き、部屋で寝ていると伝えた。
「珪翔は?」
「まだ、微動だにしないって恢濫が言ってた。意識が無いんだよ」
聞いて瑶は渋い顔をした。
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