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深々と切った腿は、今は古い傷の様にうっすらと筋が見える程度になっていた。消えてしまう日も有りそうな位だ。
「それは、無事に下せたから?」
「うん……」
「そう。おめでとう」
世都は瑶のその賛辞に素直に喜べないでいた。別に瑶が皮肉を言った訳ではない。瑶はそれを心から言ったのだから。世都もそれは解っている。
「嬉しくないの? 折角下したのに」
「だって瑶さん……」
瑶は使役(シエキ)を持たずとも、使役遣(シエキツカ)いと使役の為(ナ)り方は知っている。故、潤を下した方法も知っている。
「世都」
瑶は言ってからカップを少し傾けた。
「潤に喰われる事を気にしているのなら、潤を解放するべきだよ。僅かながら、珪翔(ケイショウ)と恢濫(カイラン)だって喰らって居るんだ。下したのはそれを見越してじゃないの? それとも、もう辛いからと根を上げてしまうの?」
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