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「あの時、本当に恐かった……」
ぽつり、と悠希が呟いた。
『あの、敗戦の事?』
「そう……」
呟く様に答えた悠希は、擁耀の長い髪を強く掴んだ。
微かに、震えている。
「後援は私たちの仕事。それが巧く出来ていなかったから……」
初めて大敗したあの日、珪翔から流れ出る血は、止まることを知らないかの様だった。動揺と珪翔につられた体調で、世都は血溜りの中で膝を突いて嘔吐した。
胃液しか上がらないのに、幾度も……。
もう一刺しで自分達の息の根が止められそうだった。もう、どうすべきか解らなかった。
その時、風変わりな聖獣が、まるで当たり前の様にそこに現われたのだった。
ふわり、と羽根でも生えているかの様に、血溜まりの広がる中にそれは現われた。
新たな聖獣の出現に、しかも世都の間近とあり、悠希と擁耀は背筋が凍てついた。
それは、敵に居た聖獣によく似ていたから……。
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