第1話*氷点下の男

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噂の彼は日当たりの良い窓際の席にいる。 少し長めの明るい髪を無造作に散らし、椅子に片足を上げて本を読んでいた。 「ごはんは?」 「食べたんじゃない?」 そんな私たちの視線に気付いたのか。 彼はこっちを睨み付けたかと思うと、 「見てんじゃねぇよ!」 そんな怒声を落とし、教室を出て行く。 ドアを勢いよく閉めていったので、その爆音に教室中が変に静まり返った。 「怖…っ」 誰かが呟く。 でもそれは私の気持ちと同じ。 彼に対する私の想い。 それは、 ――関わりたくない。 ただ、それだけだった。
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