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ドカドカと、廊下を歩く足音がする。
来た…、と俺は思った。
「なぁ、紗生(さき)!!―――アレ?」
俺――南 紗生はたぶん、柳(りゅう)から見えない位置にいると思う。
その証拠に、柳の足音が止まり、俺を怒鳴るであろう声も聞こえない。
「ねぇそこの君、紗生知らない?」
どうやら手近にいた学生に声をかけたらしい。
「いえ…、知りませんが。」
知っていたとしても答えないだろう、俺がここにいる全員に頼んでおいたのだから。
脅したわけではない、断じて。
みんなが俺の言うことを聞いていたのは、俺がよくアイツに苛められているから…、だと思いたい。
「紗生さ、柳に苛められてんの?」
俺が隠れている場所――机の下に隠れていたところの、すぐ横に立っていた侑李(ゆい)に声をかけられる。
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