第1章

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ドカドカと、廊下を歩く足音がする。 来た…、と俺は思った。 「なぁ、紗生(さき)!!―――アレ?」 俺――南 紗生はたぶん、柳(りゅう)から見えない位置にいると思う。 その証拠に、柳の足音が止まり、俺を怒鳴るであろう声も聞こえない。 「ねぇそこの君、紗生知らない?」 どうやら手近にいた学生に声をかけたらしい。 「いえ…、知りませんが。」 知っていたとしても答えないだろう、俺がここにいる全員に頼んでおいたのだから。 脅したわけではない、断じて。 みんなが俺の言うことを聞いていたのは、俺がよくアイツに苛められているから…、だと思いたい。 「紗生さ、柳に苛められてんの?」 俺が隠れている場所――机の下に隠れていたところの、すぐ横に立っていた侑李(ゆい)に声をかけられる。
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