†明暗†

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「今夜も一緒に寝る事しか出来ないぞ」 「!?!?!?!?わ、分かっているッ!!」 耳許でのクロアの揶揄い(カラカイ)に、ロアは真っ赤な顔を上げ。 その額にクロアは軽く口付け、 「!?!?!?」 「なら、行こうか」 「ッ……ぁ………う……ぁ……」 羞恥で声も出せないロアの手を引き、クロアが部屋を出て行こうとすると、室内に外からのノック音が響いた。 「…………………………」 「…………………はい」 一瞬、互いに視線を交わし。クロアがロアの手を離し、扉へと向かいノック音に応じると、 「大変夜分に失礼致します」 「カイゼル殿」 そこには側近控え室に居る筈のカイゼルが居た。 「次期様は此方に………、あぁ、やはりお出ででしたね」 書き置きを見ていないのか、ロアの所在を確認しに来たカイゼルは、扉を開けたクロアの背後にロアの姿を見つけ微笑む。 「はい、先程来られまして。これからカイゼル殿に知らせに行くところでした」 クロアもカイゼルに応じ、ロアの居た状況を簡単に説明する。 するとカイゼルは、 「次期様」 「何だ?」 クロアの背後に居るロアへと呼び掛け、 「今夜は此方でクロア殿と共にお休みになられますか?」 「あぁ」 「承知致しました」 ロアが二人の間に入り、カイゼルの確認に頷くと、 「では、私は部屋へと戻ります。お休みなさいませ」 カイゼルは就寝の挨拶と遑(イトマ)の合図を兼ねて深く頭を垂れた。 ――と、 カイゼルが頭を上げる寸前、 「ッ!?!?」 「カイゼルッ!!」 ロアの頬に寄せられるカイゼルの唇と、ロアを抱き寄せカイゼルからの口付けを阻止するクロア。 「残念。この程度は許して頂けるのかと思いましたが、」 「ふざけるな!!」 苦笑を滲ませるカイゼルに怒りを顕にするクロアとの睨み合い。 ロアだけが状況が呑み込めず、クロアに抱き締められたまま無言で佇んでしまい。 「次期様」 「ッ………何だ?」 カイゼルの呼び掛けで漸く状況を把握したロアが、警戒を顕にクロアの腕の中からカイゼルを見詰めると、 「私はずっと、もしも、貴方様との再会が叶うのならば、その時こそは本気で奪うと決めて居りました」 カイゼルはクロアに対する宣戦布告とも言える告白をロアに告げ、本心を晒すかのように不敵に嗤ってみせた。
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