第1章

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ベージュ色のスカートスーツに腰まで伸びた黒髪を靡かせ 赤いA4ファイルを片手にデスクに向かう一人の女性 仕事のできる女を感じさせるこの女性は、二重瞳にスッキリと通った鼻筋、ふっくらとした唇のいかにも 可愛らしいという言葉が似合いそうな顔をしていた。 美華「ねぇ! さっき頼んでおいた資料はまだ?」 社員「あ、すみません! あともう少し」 美華「五分以内に持って来なさい!」 彼女はピシャリと部下に言い放ち ガラス張りの仕事場に入ると 外から見えないように、 ブラインドを閉めた。 「はぁ、最近の若い子はホント仕事が遅いんだから……」 ブツブツと小言を言いながら、 デスクに置いた赤いファイルに 目を通す。 彼女の務める会社は、 滅菌装置や透析用ろ過器と言った医療関連機器をメインに 取り扱っている地元の製造会社。 機器の自社開発・製造はもちろん アフターケアのメンテナンスも 一手に担っている。 高度な技術と ユーザーの信頼を獲得し、 県内はもとより国内や海外に 措いても業界トップシェアを 誇っている。   そして彼女のデスクに置かれた 室名表示板には、 「第三設計部 課長 藍澤 美華」 と、書かれていた。 コンコン 美華「はい、入って」 樹「失礼します」 美華「なんだ、大神君か。どうした?」 樹「先日、ご指示されていた書類ができました。」 美華「えっ?そ、そう見せなさい。」 美華(何!この子、あれだけの量のデータをもう、まとめたっていうの?どうせ、適当なんでしょ) サラ、ペラ 美華は、樹から差し出された書類をめくり読み込んだ。 美華(な、なに?言われた通り完璧じゃない) 美華「大神君。いいみたいね。もう少し読み込むから置いてってくれる」 樹「はい、お願いします。では、失礼します。」 樹は美華にお辞儀をすると、ドアの方に向ったが、ドア手前でクルリと向きを変えた。 樹「課長、お時間が出来ましたら、是非、ご相談に乗って頂きたいのですが……。」
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