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日本、某人工島。
とある実験施設――後に『玉手箱』と呼ばれる無名の実験施設にて。
そこには妖しげな赤光を放つ巨大な培養器に入った一人の少年と、それを囲むように多くの人々が立っていた。
少年は薬品か何かで眠らされているのか、硬くその瞳を閉じており、息はしているようだが、生気を感じさせない雰囲気だ。
その中の一人――錆びた劔(つるぎ)を手に抱え持つ女が、口を開いた。
「あーのさぁ、あたし的にはやめといた方がいいと思うんだわ。だってこれ、第一級の業物咒装(わざものじゅそう)よ? 基本的に人間が触れたら脳漿ブチまいて死ぬモンよ? 古事記にも出てくる、言わば神話クラスよ? それをこんなガキの身体に埋め込むとか――ねえ、あんたら正気? この実験何回目よ。被験者、今のところ全部お陀仏してんでしょ?」
そう口を動かした女の言葉は、目前の男に発せられたものだ。
枯れ木のようにやせ細った、茸を思わせる白髪混じりの灰色の髪型に、鋭い――追い詰められた鼠のような眼光の、サングラスのような眼鏡を掛ける近付きがたい男へと。
男はあくまで女を見ずに、培養器の少年を見詰めながら、答える。
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