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「正気だよ、芭蕉。少なくとも私はな。他の奴らがどうかは知らんが。第一級にして神話クラスの業物咒装――だからこそ埋め込むのだよ。いいか、芭蕉。この島は『化物』を渇望していて、世界には『化物』が溢れている。確かに今までの被験者は全員死亡しているが、この個体は死なんよ。なにせ正真正銘の『化物の息子』だ。そう簡単に死なれては困る」
そんな男の返答に不服なのか、白衣の女は間髪入れずに言葉を投げかける。
そして、それ故に女は気付かない。
「ちょっと待ってよ。じゃあなんでそのガキをさっさと使わなかったのさ。あなたには解ってたんでしょう? もっと早く使っていれば、今まで失敗した被験者は――」
「芭蕉。『蟲毒』という呪術を知っているか? ある一つの壺に様々な毒虫を放り込み、最後の一匹になるまで殺し合わせる。すると、生き残った一匹は死んでいった全ての毒虫の怨念を浴び、一つの強力な『呪い』と化す、というものだが――。なあ、芭蕉、お前――『コレ』が本当に只の培養器だと思っていたのか?」
そう言って振り向いた男の狂気に満ち溢れた笑みを見て、男の話を耳にして、女は、理解する。
目の前の培養器のようなモノ、死んでいった被験者、蟲毒、化け物、第一級の業物咒装……。
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