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私のデザインはまず、クライアントの情報収集から始まる。
業界で名前が挙がるようになったと言っても、それまでが簡単な道のりだったとはとても言えない。
ひたすらの努力だ。
コンペ参加が決まってから、私は実際の店舗を巡った。
店内の商品の陳列方法を覗いたり、店員に客層や人気商品について話を聞く。
街に出ればブルーパブリックのバッグを手にしている女性を観察したり、ブランドのポスターやDM。FacebookやTwitterもチェックする。
私自身も今は毎日、唯一持っているこのブランドのショルダーバッグで出社していた。
去年の春、祐介が買ってくれたものだった。
私は毎日、祐介からのプレゼントを一つ身に着ける。
これは祐介にも内緒にしている、私の秘密だった。
それが私のお守り代わりであり、
祐介を身近に感じる密かな乙女心だった。
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