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チクタクチクタク…狭い室内に時計の音が鳴り響く
「で、今回の要件は?」
酷く古びた時計を器用に直していくこの女は影時 麗華
この時計屋の主だ
「依頼人の顔も見ずに言う事ですかね?」
黒のスーツを着こなした男性は微笑む
「んー…で、今では世界でもトップクラスとも言える御曹司さんが何故こんなところに?」
手を止めずに影時は話す
男は一瞬酷く驚いた表情をする
何を隠そうこの男は今や知らぬ者はいない位の月夜財閥を一世で築き上げた天才御曹司、もとい月夜 惇なのである。
「それは良くご存知で。しかし、世間に私の姿は公表されていない筈ですが?」
「私の知り合いが有名な情報屋なんですよ。いろいろネタに持ってくるんです」
ですが貴方様がこんなに若い方だとは思いませんでしたよ…と呟く影時の手元にはもう古びた時計は無く、二人の手元にはコーヒーが置いてあった
「男性の方にはカフェラテが苦手な方が多いようですのでブラックコーヒーを用意いたしましたがお気に召しましたか?」
「えぇ。とても」
助手のような男性が無表情のまま月夜に話しかける
僕がコーヒー通な事まで知ってるのか…と苦笑いし月夜はコーヒーを口に運ぶ
「では最初の質問に戻りますが、今回は何故こんな所へ?」
「ちょっとした事件…いや、厄介事が有りまして…」
影時は外を眺める
今日はいつもより霧がかかっている…
面倒な事にならないといいが…
そう呟いて苦味の強いコーヒーを飲んだ_________
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