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「暁の空に残る月……ね」
月夜が帰り、三十分程経った
椅子から一歩も動かず、ただじっと手紙の事について考えている
珍しい…
書類を片付け、影時の前に立ち止まる
「そんなに気になるんですか」
会話なんて長続きもしないだろう、と思いながらも話しかけた
「君からなんて珍しいね」
そうですか、と適当に相打ちをうつ
まあ予想はしていたが本当にこんな会話で終わるとは…
先月より多い書類を眺め、ため息を着く
修理及び捜査担当は影時、
管理は霧谷。
ホワイトボードに貼られたクシャクシャの紙を横目で睨み、また作業に取りかかった
この店に勤め始めてから一年半近くになるがこの人と自分は何故か話が噛み合わない
まあそれでも何と無く上手くやっていけてるのが不思議だ
そういえば、と適当に話を繋げる
「朝から気になっていたんですけど、月夜社長は何故こんな所へ?」
影時はコーヒーを一口啜って口を開く
「柚原じゃないかな」
柚原……確かデザイン会社の社長だった気がする
影時の自慢の親友の一人らしい
まあ確かに俺達を知ってる奴の中では一番月夜社長に近い存在と言えるが柚原という人間は頑固な無口だったはず
あまりそういった事を口に出さなそうだが人は見かけによらない、という言葉がある時点でその可能性は低確率のようだ
「まあ…そうですよね」
「出かけてくる」
早足でドアの方へ向かい、乱暴に外へ出る
ドアが壊れる前に注意しとかないと……
一気に静かになる部屋
シーン……といった効果音が似合うこの空間がどれだけ愛しい時間で有ったかを数分後の俺は知らない
……筈である
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