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「ルアゼナ…?」
その名の響きを、聞いたことがないような、あるような。
覚えはなくとも、馴染みのない言葉ではない気がして。
シャスタが首をひねっていると、灰髪は「もういい」と言い、話し始めた。
「この地の雪のような白い髪に、地の下で力蓄える緑の瞳。その身に宿すは冬。…大切な、人だ」
はっきりとした物言いの中、深いため息のように紡いだ最後の言葉に、シャスタは、灰髪の、ルアゼナへのあらゆる想いを感じた。
夜の風のように静かに、けれど、強く慕っているのだと、シャスタは気付いた。
「じゃあ、俺が緑の瞳を持ってるから、か?」
そう問い返すと、灰髪は首を振った。
「違う。その目は…」
しかし、灰髪が続く言葉を口に出すより前に。
シャスタの耳をつんざくような、音が響いた。
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