運命なんて、くそくらえ

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 おれの実家は少々特殊だ。一生を寄り添う相手を占いで決めるのだという。運命の相手にいつどのように出会うか生まれたときに決まっているらしい。俺の一族はそのようにして繁栄してきたそうだ。どんなオカルトだ。  初めてそのことを聞かされた時は何か変な宗教にでもはまったのかと心配になった。「病院に行こう」と口に出したら兄貴に殴られた。親父は苦笑いを返してきた。  運命の相手、なんて親父も最初は悪習だ迷信だと馬鹿にしていたらしい。そんな訳の分からないもので決められてたまるかと。が、母さんに出会ってそんな考えはいっぺんに吹っ飛んだ。 「運命の相手だと母さんと引き合わされて、一目見た瞬間に衝撃が走った。すぐにわかったよ。ああ、この人が俺の運命の相手だとな」  懐かしそうに話す親父に「ただの一目ぼれだろ」と突っ込んだらまた笑い返された。兄貴もそんな感じで運命の相手とやらに出会ったらしい。兄貴の場合はそうとは知らずに出会ったらしいが。  まあ、そんなこんなで俺もそろそろ運命の相手とやらに出会う時らしいので教えておこうということらしい。正直、聞きたくはなかった気もする。そろそろ出会う、ということは今俺が付き合っている相手は運命の相手ではないと言われたも同然だからだ。  真紀はかわいいやつだ。最初はネットで知り合ったのだがふとした発言から同じ学校で同じクラスであることがわかった。しかもそのことがわかる前からお互いが気になる存在だと思っていたのだ。こっちの方が運命の相手といってもいいだろう。  学校でも公認の仲として知られておりお似合いだと友人たちからも祝福された。俺の家の事情とかも真紀は理解しており、お互い結婚を視野に入れて真剣に付き合っている。  そのことも含めてそろそろ親父たちに真紀を紹介しようと思っていた矢先にこの話だ。到底受け入れられるものではない。今現在付き合っている相手がいると言ったら親父と兄貴はそろって「運命だから仕方ない」とさっさと別れるよう言われた。  その軽い態度にぶちぎれて、思わず持っていたカップを机にたたきつけ部屋を飛び出した。 「ふざけんなよっ」  何が傷が浅くて済んだなだ。いい加減にしやがれ。俺は真剣に真紀のことを愛してるんだ。運命だか何だか知らないがそんなもののために真紀と別れろだと。そんなもの知るか。 「運命なんて、くそくらえ」
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