第四章

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きっかり5分でシャワーを浴び、首にタオルをかけたまま自室へと戻ると、理子は部屋にいなかった。 けれど、理子の残り香があるような気がするのは、俺の願望がなせる業なのか……、1人でニヤつく。 俺は、ササッと手早く着替えて階下に降りる。宣言通りの10分後に、開けた居間の向こう側には………、 あれ? 予想外で理子はいなかった。 ほんの少し拍子抜け。そして、絶対いつもならいるはずのない人物がヒョイッとキッチンから顔を出す。 「朝ごはんは?」とゆき枝が俺に問う。 「………大丈夫、いらない」 腹減ってないし、 「そう、コーヒーさっき理子ちゃんが入れてくれてたよ」 「あぁ……うん」 テーブルの上には入れたばかりのコーヒーが置いてあった。 「それから、時間になったら車で待ってるって言ってたよ」 「………うん、わかった」 あと、10分ちょっとか……、時刻を確認してから、コーヒーを手に取った。俺専用のマグに入っている。 うん……それだけで、わけもなく嬉しかった。 コクリと一口飲めば、うん、ちょうどいい甘さだーー、と満足気に頷いた。 ふと、ゆき枝の後姿が視界に入り、俺はボンヤリと考える。 理子が朝早く俺を起こしに来た事。巧さんにどこかに送ってもらうこと。よくわからないこの状況について、ゆき枝は何か知っているのだろうか? 浮かぶ疑問。 ゆき枝に聞くが聞くまいか、考えこんでいたら……、
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