第一章

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それからさらに30分後、 アパートの階段を登ってくる足音。 ここに来て、四人目。 悠ちゃんでないことに、もうすでに何度もガッカリさせられていたので……、正直期待もしてなかった。 「うわっ、」小さな声だけど、驚く男の人の声が聞こえて、釣られるようにそちらに顔を向けた。 「ん? 誰?」 その声に、待ちわびた悠ちゃんだと確信! でもどうやら、向こうは気付いてないみたい。 薄暗いアパートの明かりが、私の顔を隠し、ドアの前で小さくしゃがみ込んでいたせいで、影になってたみたい。 帰ってきてくれたことが嬉しくて、勢いよく抱きついたら、 「うわっと」 不意打ちに悠ちゃんの身体はよろけてしまう。何とか左足を一歩引いて踏ん張ってくれたから、お互いに倒れずに済んだ。 「おかえりなさい! 悠ちゃん!」 「えっ?理子?」驚きの声。 ぎゅっと抱きついた胸から、ゆっくりと顔をあげたら、眉根を寄せた悠ちゃんが、私を困惑の表情で見おろしていた。
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