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「じ、じゃあ、私はここで、ばいば…って、何だこの手は…っ」
和田に腕を引っ張られて帰るのを止められた。
「い、いや、笹原ってさ…」
「…なに」
何なんだ。
早く帰りたいんだけど。
「…笹原ってお粥作れるか…?」
「え、作れるけど…それがなに」
和田は下を向いて掴んだ私の腕を小さく揺らしている。
…なんだこれ。
女かお前。
「お粥…作ってくんねぇかな…?」
「はぁ…?嫌だよ。お母さんとかに作ってもらえばいいじゃない」
本当、なんだこれ。
何で私がそんなことしなきゃいけな…
「母さん居ねぇから…」
「え、何で。仕事とか?」
それなら仕方ないかなとか、友達なら思うんだろうけど、私は思わない。
早く帰りたい。
出来ることなら和田と…っていうか他人と関わりたくないんだ。
和田は黙ったままで
マスクと前髪の間から見える瞳は、ただ地面を見つめていた。
何を考えているのなんて知らない。
し、
知りたいとも思わない。
はぁ…ほんっとにめんどくさい。
「…わかったよ。作りゃぁいんでしょ、作りゃぁ」
そう言うと、和田の目が笑った。
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