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キルリアーナは手配書を奪い取り、力任せに丸めた。まったく忌々しい。この手配書が出回っているおかげで、追いかけ回される日々なのだ。
「どこにでもあるさ。少し裏へ入ればね。賞金稼ぎが、こぞって君を捜している」
「ばかばかしい」
吐き捨てると、ロイスは困ったように肩をすくめた。もちろんキルリアーナも、理解している。世間的には自分は間違いなく犯罪者だ。そして、たとえその真偽がどうであろうと、賞金がかかっているのなら追われるのは当然だ。
「今日も、賞金稼ぎに追われていたんだろう。しかもグループだったな。いつもあんな感じなのかい」
いつもといわれれば、いつもだった。ごまかすことでもないので、キルリアーナはうなずく。
「オレを追う全員が賞金稼ぎってわけじゃねえだろうけど、まあいつものことだ。逃げるのには慣れてるよ」
ロイスの表情が険しくなる。しかし、なにかを思い直したのか、彼は自分自身を落ち着かせるようにゆっくりと深呼吸をした。それから、真剣な顔をする。
「そこで君に、提案があるんだ、キルリアーナ」
呼びかけられ、悪寒を覚えた。
「キルでいいよ。あんたの呼び方はなんかこう……まとわりつく」
「失礼だな。いや、まあいい。それならキルと呼ぼう」
いつの間にか、ロイスは足をベッドから出し、皮の靴を履いていた。真摯な瞳で、じっとキルリアーナを見つめてくる。
「キル」
やはり、背筋がひやりと──というよりも、ぬめりとする。
「なんだよ」
自然、ぶっきらぼうないいかたになる。見つめられて名を呼ばれるなどと、慣れていないにもほどがある。
緑色の目は、まるで少年のそれのように透き通っていた。そこにキルリアーナが映っている。その顔にははっきりと、逃げ出したいと書いてある。
しかし、手を取られ、逃げ出すことはできなくなった。両手を、まるで祈るように握りしめ、ロイスは顔を寄せる。
キルリアーナは反対側へと身体を引いて、距離を保とうとした。椅子から落ちそうになったが、ロイスが力強く握りしめているため、とどまることになる。いっそ落ちてしまいたいぐらいだ。
「僕はね、キル。君に助けられたあの日から、ずっと君を捜していたんだ。あの日までの僕は死んだ。新しい命をくれた君に、恩返しがしたい」
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