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点滴が終わるまで、まだ時間がかかりそうだな……
あたしは顔を正面へ戻し、再び瞼を閉じた。
病院のベッドで眠るのは交通事故の時以来だ。
独特の薬品の臭いやら何やらが入り混じっていて
相変わらず好きにはなれない。
そして何より、この場所は事故のことを思い起こさせる。
和也さんも……
今までのいろんな思いが頭の中で回りに回っているのかもしれない。
和也さんが流す涙は、何の涙だろう。
新谷への恨みつらみからくるものなのか、
はたまた、
あたしに懺悔をしながらも、
何があってもあたしを一生放さないという誓いの涙なのか。
聞くべきか、聞かぬべきか。
もしも―――…涙の理由が、後者だったとしたら。
そう思うと、怖くて到底聞けない。
あたしはそれから数分、眠ったフリを続けた。
でも、自分で思うよりもかなり疲労していたらしく、
そうしているうちに再び、深い眠りに誘われた―――…
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