仮想世界

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鼓膜を破りそうな程大きな音を鳴らし続ける物体を止めゆっくりと身体を起こし、それと同時に先程止めた目覚まし時計を見る。 7時00分 朝の気だるさを取り除くため日光に浴びようとカーテンを開ける。雨だ。 雨というだけで気分は下がり、気だるさを残したままリビングに向かい朝食を食べる。朝食と言っても食パンにバターを塗るだけだ。 朝食を食べ終わり歯磨きを済ませ制服に着替える。机に掛けてある鞄を持ち、誰もいない家に一言「いってきます」と言い傘をさしてアパートを出る。 いつもは自転車で通っているが雨のため歩いて登校する。同じ高校の人や会社へ向かうサラリーマンを見ながら、いつも通りのルートで学校に到着し教室に入る。 「准矢おはよ!」 太地がすぐに声を掛ける。准矢も挨拶を返すと他のクラスメイトも准矢に挨拶をする。 「今日授業昼までだしさ、ボウリングでも行かね?」 太地がそう言うと教室にいたほとんどの人が「いいね」「行きたい」「行こ行こ」など盛り上がりを見せる。勿論、准矢もその中に混じっている。 「じゃあ来れる人は学校終わったら教室に残って打ち合わせな」 ボウリング行くのに打ち合わせとは大袈裟だな。などと思いながらも頷き窓際の前から二番目の自分の席に向かう。だがそこに誰かがいる。 「何してるの?」 呆れ半分で椅子に座って、何かをしている結依に尋ねるとその子はしまった、見つかった。という様な顔を見せ、じゃあねと手を振り退散しようとする。 「いやいや待って」 焦って立ち去ろうとする結依の制服の襟元を引っ張るとうぐっと言い動きを止めた。 「痛い!何すんの!」 何だ?逆ギレか?完全に呆れた准矢は再度何をしているのかを問いただした。すると結依は観念したのか、頬を膨らませた後に少し早口で理由を言った。 「昨日、数学のノート書き忘れたから借りてただけ!それを返すために机の中に入れようとしてた」
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