仮想世界

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いつの間に。全く気付かなかった。それもそうか。家で勉強なんて一切しないんだから。だが、それとこれとは話が別だ。勝手に取られてたのに謝罪もなしに許す筈がない。 「で、何か言う事は?」 これでごめんなさいの一つも出たらいいのだが結依はそうはいかない。 「汚いノートありがとうございました」 「なっ…」 あまりの態度の悪さに言い返してやろうかと口を開けたと同時に、SHR開始のチャイムがなり先生が教室に入ってくる。 「ほらほら、早く座れ」 仕方ない。次の休み時間に文句の一つも言ってやろう。准矢はべーとしながら自分の席に戻っていく結依を見ながらそう思い、委員長の中澤の号令と共におはようございますと言い椅子に座った。 ぼんやりと窓の外を見ているうちにSHRが終わっていたようで、皆あちこち立ち歩いている。結依に何か言うのは後でいいか。そう考えそのまま窓の外を眺めていたが、准矢を呼び掛ける声が聞こえたので顔を向けた。 「お前、ボウリング行く?」 聞いてきたのは藤太。どうやら俺は行かないと思っているようだ。 「行くだろ?なあ准矢」 藤太の後ろにいた太地がそう言うと、准矢は行くよと返した。そうかそうか、と言って藤太と太地の2人は違うグループに行ってしまった。 一時間目は数学だ。ふと結依を見ると顔を隠したつもりだろうか、教科書を頭の前に立てて寝ている。またノート盗られそうだな。次は警戒せねば。 数学担当の先生が何かの公式について説明している中、また准矢は外を眺めながらこう思った。 このままずっとこんな日常が続けばいいのに。終わらなければいいのに。
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