第1章

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夏騎は三週間前にあった全国大会でこの相手に負けていた。 完全に隙を突かれ負けていたのだ。 夏騎はまた、目を閉じて相手の構えを思い出した。 上段に構えていたのか下段に構えていたのかそれさえ思い出せない。 思い出せない時点で既に負けているではないかとため息を付いた。 相手は去年のインターハイからずっと夏騎だけを意識して稽古に励んでいたと見られた。 イヤ、もしかしたらそれ以前の中学の時から夏騎を意識していたかもしれない。 去年勝利した時の異常なまでの悔しさに満ちたあの視線。 「上等じゃねぇか」 今度、相手に会うのは今年のインターハイだ。
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