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「雷閃ッ!」
電荷を帯びた槍の薙ぎ払いがソラの足元に迫った。
だが、それもソラは躱した。
今度は飛び上がって。
ーーー『チャンス!空中なら躱せないだろ!』ーーー
空中に浮遊するソラ目掛け飛鳥を素早く突きを放った。
狙うはソラの腹。
「よいしょ!」
ソラは体勢を変えて槍の穂先間際の柄に掌底をぶつけ、突きの軌道を真下へと変えた。
更にそれで終わらせず、そのまま柄の上に軽やかに足を乗せ立ってみせた。
“ガンッ!”
飛鳥は突然の荷重に耐え切れず、槍の先端を床へと着けてしまった。
柄には変わらず立ってみせるソラ。
「残念だな」
「くう、舐めるな!」
ソラの言葉に気を荒げた飛鳥は槍を強引に振るってソラを槍から降ろさせ、攻め込んだ。
「ソラのやつ、あれは...」
「引き分け狙いだね」
リクの言葉に続き、カイリは言った。
「ソラならもう何度か攻撃するチャンスがあるのに、一向に攻撃しないな」
「よっぽど負ける訳には行かないんだね...」
飛鳥の猛攻を躱し続けるソラの様子を見ながら、二人はソラの心情を察した。
二人の推察は正しかった。
ソラは勝とうと思っていない。
だが、負けようと思っていない。
速い話、ソラは『戦おう』と思っていないのだ。
相手の攻撃を躱し、その隙を突くのはソラにも出来る。
だが、それは逆に躱された時に大きな隙を生む要因にも成りかねない。
実際、ソラは『わざと』隙を作り、飛鳥に『予想通り』の攻撃をさせることで攻撃を全て防御している。
飛鳥はそのことに気づいていない様子だが、気づいていなくても彼女の実力なら隙を突いた攻撃を寸前の所で躱し、逆に決定打を入れる可能性はある。
だからソラは攻めない。
ソラは『負ける訳にはいかない』。
という訳ではなく、単に『負けたくなかった』。
そして勝ちたいとも思っていない。
故に結論は『引き分け』を狙うことである。
模擬戦は一試合15分。
それを過ぎたら強制的に終了である(ちなみにリクとカイリは先程の試合は5分以内にすませた)。
それで下される判定は引き分け。
引き分けまで、あと10分。
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