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猛攻を躱し、流れること5分。
「ハア、ハア...」
飛鳥の呼吸は乱れていた。
いくら攻め立てても、ソラにはかすり傷すら負わせられず、魔力と体力の消耗で疲労が募っていた。
一呼吸する度、汗が一滴床に落ちていた。
ーーー『クソ、こっちの攻撃を悉く躱しやがる....これじゃジリ貧だ』ーーー
飛鳥はソラを睨みながら、必死に疲労に耐えていた。
ーーー『何で、何でコイツは...』ーーー
飛鳥は憤りを感じていた。
前からソラのことが気に食わなかった。
コントロールにこそ難はあるが、その魔法の威力は一年生の中でもトップクラス。
正直な所、飛鳥はその『才能』に嫉妬してた。
それだけなら、単に競争心を抱くだけですんだだろう。
ソラは魔法の訓練を行わない。
正確には、学内での自主訓練の様子を飛鳥は見たことがない。
現代において、魔法は危険な力である以上、使用には制限がかかっており、使うには以下の条件のどれかに当て嵌まらないといけない。
①魔法使用が許可されるエリア内にいる
例:教育機関、研究施設、名家保有の領地
②職業資格を有している
例:消防士(防災目的での魔法使用を許されている)、心理療法師(精神治療での魔法使用を許可されている)
③生命の危険に瀕した時(つまりは正当防衛目的での使用)
この条件外での使用、特に対人攻撃目的で使えば法的に厳罰は免れない。
つまり、飛鳥達学生が使用を許されているのは実質的に学園内のみである(公共のトレーニング施設などもあるが有料のため、学生の使用率はあまり高くない)。
それなのに、ソラは訓練を行わない。
飛鳥にとって、せっかくの才能を腐らせる様なソラの行為は弛まぬ鍛錬で今の実力を得た飛鳥にとって許せないものだった。
まるで自分の努力を侮辱されているように思えてならない。
こんなのはただの八つ当たりだと飛鳥本人も分かっている。
だが、それでも飛鳥はソラに勝ちたかった。
勝って自分の強さを証明したかった。
だからこそ、飛鳥はこんな危険な真似をとることにしたのだ。
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