怠惰で不敵な魔導士

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「ハアアアアッ!」 飛鳥は咆哮した。 それに伴い、飛鳥の槍に激しい放電現象が起きた。 バチバチと火花を散らし、飛鳥の槍全体を高圧電流が巡った。 ーーー『槍に電気を纏わせている。これは...属性付与』ーーー 『属性付与(ぞくせいふよ)』 先程までの様に攻撃の瞬間のみ、槍(正確には穂先の刃)に電気を纏わせるのとは異なり、常時魔力を武器に帯びさせる魔法技術である。 そうすることで武器の耐久性と一撃の威力を上げ、あらゆる状況に即応することを実現した。 「ハア....ハア..いくぜ、破滅(はめつ)(いかずち)豪雷槍(ごうらいそう)!」 強力な電気を纏った槍を手に、飛鳥は改めて構えた。 槍は全体に電気を纏い、一回り大きくなっていた。 時折、その電気の形は揺らいでいた。 「あれは..」 「まずいよ」 リクとカイリは焦りの色を浮かべた。 ソラも気づいていた。 ーーー『電気の形状維持が不安定だ。消耗している時に使ったせいだな....あのままじゃ、暴発する』ーーー ソラは槍と飛鳥を見た。 顔色が先程から明らかに悪くなっている飛鳥。 それに呼応する様に纏う電気が不安定な槍。 周りはまだ気づいていないが、このままでは飛鳥の身が危険だった。 担当教師は他の生徒の様子を見ているため、こちらの様子に気づいていない。 ソラは担当教師を呼んで試合を中断してもらおうと思った。 だが、その思考はすぐに中止した。 飛鳥を見た。 疲労から重くなってくる体に力を抜かず、必死に耐えてソラを見据えていた。 そんな彼女の目に篭る意思を、ソラは感じ取った。 『負けたくない』という意思を。 模擬戦如きに意地を張って愚かだと言えばそれまでだが、ソラはそう思わなかった。 愚かなのは自分だった。 負けたくないからと引き分けを選ぼうとした。 そうじゃない。 自分が望んだ強さは『負けない』ことではない。 『勝つ』ための強さを自分は望んだのだ。 この日、ソラは初めて臨戦体勢をとった。
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