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そんな佐々倉さんは無視に限る。
佐々倉さんのニヤニヤ笑いを、華麗にスルーした私は、そろそろ仕事に戻らなければ、また花宮上司に怒られてしまうと、焦りを感じていた。
「あ、あの…そろそろ仕事に…」
佐々倉さんと祐樹くん、2人の険悪な空気に引けを感じながらも、口を開けた。
「あ、そうだね。じゃ、そろそろ戻ろうか?」
祐樹くんは、佐々倉さんに向けていた敵視を消して、私に柔らかな視線を向けた。
少しホッとした。
もし、佐々倉さんと同じ視線を向けられたら、立ち直れなくなってしまいそうだったからだ。
「えっと、じゃあ。“ただの”時計屋の店主さんも、お帰りになられた方がいいと思いますよ?」
「俺らは、これで。」そう言って、祐樹くんは私を仕事場に行くよう促した。
けど……
「さ、佐々倉さん!」
どうしても、佐々倉さんを置いてけぼりには出来なかった。
「えっとですね……あの…」
ただ、何を話せばいいかまでを無計画だったのには、自分でも呆れる。
目を泳がせて、何を話すか考えている私に、佐々倉さんは、何故だかとても嬉しそうに、
「美胡さん。また、お店にいらして下さいね? 待ってますから。」
と、綺麗な微笑みを向けてくれた。
その笑顔を見て、私は確信した。
あぁ。私は、この人のことが好きなんだ。
と。
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