百鬼夜行

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「…って、起きたばっかでそんな消化の悪いもん食べたらアカン!」 感動の再会もつかの間、龍はすぐに織夜の右手にあるものを指摘した。 織夜が右手に持っているのは大きなメロンパン。 そして織夜のすぐ左隣にある机の上に乗っている袋にはパンパンにつめられたメロンパンの山。 それを見ただけで龍は胸焼けを起こすような錯覚に陥った。 「もっちもっち。」 「なあ、織夜。話聞いとる?」 「もっちもっち。」 織夜を説教をしようと正座をさせても食べることに夢中で話をまったく聞かない。 龍は途方にくれていた。 自由人。フリーダム。我が道を行く。 それこそが高里織夜なのだ。 ちゃーらーらーちゃっちゃらー… とてつもなく微妙なスマホの着信にすぐさま反応したのは、その持ち主である拓磨だった。 ポケットにあるそれを無言で手に取る。 …まさか、織夜の兄である希央ではなかろうか。 ふとそんな嫌な予感がする。 画面を覗き込むとその予感は確証に変わった。 目の前の画面には『希央さん』と確かに映し出されていた。 拓磨は通話ボタンを押すか押さないかで、幹部たちの顔を見やる。 すると、その場にいる全員が 「何してんだよ。早くでろや。後がめんどくせーの知ってんだろ?」 というような顔をして拓磨を見ていた。 当の本人である拓磨は小さく舌打ちをすると、画面に表示されている通話ボタンを指でタップした。 すかさず耳元へ持っていくと、定番の出方で相手を迎えた。 「はい、もしも」 『織夜がそっち行かなかったか!?』 第一声がそれかよ。 スピーカーにしていなかったはずなのに全体に聞こえたその声に幹部全員が心の中でまったく同じ言葉を唱えた。 「…。」 「…。」 「…。」 「…。」 「…。」 「…ココニハキテナイデスヨー。チャンニイ、ホカアタッテクダサイ。」 「もっちもっち。」 『待て待て待て待て!!今もっちもっちって聞こえたぞ!?何嘘ついちゃってんの!?思わず騙されそうになったわ!』 「ちっ…。」 『舌打ち!?…とにかく代わってくれ!』
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