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拓磨は仕方なく、希央の願いどおりに自分のスマホを織夜に渡した。
キョトンとしてそのスマホをじーっと見つめていた織夜に武人が横から声をかけた。
「……希央さんからみたいですよ。出てあげてください。」
「もっちもっち。」
若干不服そうな顔をした織夜だったが、何も言わずにそのスマホを受け取り耳に当てた。
『あっ、織夜か!?どうして病院を抜け出したりしたんだ!だめだろ!?兄ちゃん行ってみたら織夜居なくて驚いたんだぞ!』
「もっちもっち。」
『なっ!?兄ちゃんはなぁ、お前のことが心配で…っ!できれば一番最初に目覚めたお前を見たかった…っ!!』
「そっちが本音っすよね!?」
電話越しに希央がつらつらと説教しているのがよく分かった。
それに対して翔がツッコミを入れていたが、他の幹部たちはこればかりは仕方がないとため息をついて電話の終わりを待った。
そんなタイミングで、幹部室をドンドンとノックする音が聞こえた。
「なんやー?」
その音に一番最初に反応したのは龍だ。
龍の声が聞こえたのか、幹部室のドアがゆっくりと開けられた。
「失礼しま…うおっ!?お、織夜さん!?」
ドアを静かに開けた青年が、織夜をみて驚きを隠せないでいる。
それを見た龍が、あー・・と言いながら、その場を何とかしようと口を開いた。
「後でゆっくり話すさかい今はおいといてーな。そんで?なんや用あるんやろ?言ってみぃ。」
「は、はい!幹部の皆さんに言うほどのことでもないのですが、下に月花とかいう族のやつらが入ってきてまして…。」
「…喧嘩?」
その青年の用件の内容に、織夜が反応した。
「喧嘩?ねえ喧嘩なの?ねえねえ。」
織夜は突然、先ほどまで食べていたメロンパンを机に投げ出すようにしておくと、しきりと喧嘩?とたずねて来た。
ドアのそばに立っている青年がそんな織夜の顔を見て、ひっ、と短い悲鳴を上げた。
なぜなら、織夜の顔が先ほどまでのキョロンとした可愛らしい顔ではなく、光がまるでない据わった状態の目をした冷たい表情になったからである。
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