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カツ、カツ、
「…したいなぁ…喧嘩したいなぁ喧嘩したいなぁ。ねえねえ。…いいでしょう?」
『……!!』
その場に居る全員が背筋にゾクリというなんとも言えない感覚に襲われた。
ある者は恐怖、またある者は歓喜、そしてまたある者は興奮。
それぞれ違う感情をあらわにした。
織夜が爪を噛みだした。
カツ、カツ、カツ、カツ、…。
ただひたすら無表情で爪を噛み続けるその姿に、幹部たちがニヤリと笑みを浮かべた。
拓磨が織夜に貸していたスマホを取り上げて、自分の耳元に近づけた。
『おい!織夜聞いてるのか!?』
「すみません、希央さん。今日はアンタの弟の復活祭だわ。」
『復活祭…?まさか…、駄目だ!』
「俺らにあいつは止められませんよ。てか、止める理由もねえ。」
『まて、おい!』
半ば強引に通話を終わらせると、拓磨は無造作にポケットに突っ込んだ。そして、織夜の肩に手を置いて、ニッと気持ちの良い笑顔を見せた。
そんな拓磨の様子に織夜はパアッと顔を明るくさせて、幹部室から出ようと立ち上がった。
「そんじゃあ、俺らも行きますか!楽しみっすね姐さん!」
「そうだねえ。うちの総長の復活にふさわしいシチュエーションだ。」
「あちゃー!でも物足りなさそう。」
「……。」
そして幹部たちも、織夜の後をついていくように次々と幹部室から出て行った。
そこに残ったのは、道を開けるために部屋の中まで入ってきた青年と龍だけである。
龍は織夜たちを見届けた後、自分自身もソファから立ち上がり出口へと歩いていった。
外に出る寸前に、いまだ待機している青年に声をかけた。
「自分、坂下ゆーたな。」
「は、はい!」
「メンバーに伝えてくれへん?『自分らは手ェ出すな。月花ゆーのは俺らトップが相手する』ってな。」
「分かりました!」
青年、もとい坂下は元気な声で返事をするとそそくさと幹部室から出て行った。
そしてその姿を見届けると、龍も幹部室のドアを閉めた。
「…坂下使えるな。俺の補佐でもやってくれんかなー。」
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