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私にはふたつ年上のいとこがいる。
彼女の名前は岩本すみれちゃん。
私が憧れる私立光丘学園に通っている高校一年生。
私は地元の公立中学に通う中学二年生。
名前は水森莉世。
この春で三年生になり、いわゆる世間でいうところの受験生になるのだけれど、志望校は今のところ近くの公立高校を二つ考えている。
この場合、考えているっていうのは、あくまでママと先生が考えていることであって、そこに私の意志なんかは、ミジンコほども入っていない。
私は光丘学園に行きたいって言ってるのに。
あの制服を着て、あの子お嬢様なのかな? なんて思われながら颯爽と駅を歩くのが夢だって言ってんのに。
ママって頭が固い。違った、財布の紐が固い。
私立高校なんてお金がかかるから、絶対ダメなんだって。
理由は簡単。うちにはパパがいないから。
ママとパパは私が小学校二年生のときに離婚した。
それから、私はママとふたりで、それまで家族で住んでいたマンションから、古いアパートに引っ越し、今でもそこで生活をしている。
古いアパートは、部屋は畳で古いし、階段の手すりも錆びているし、隣に住んでいるのは、一人暮らしのおじいさんだしで、あまり住み心地が良いとはいえない。
でもまあ、アパートの隣は昔ながらの民家が並んでいたりして、それはそれで、下町のほっこり人情みたいな空気が感じられて、それは悪くはなかった。
ただ、私が憧れる光丘学園の雰囲気とは違いすぎるというだけで。
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