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私も買いたいけれど、お小遣いがない。
はあ。高校生になったらバイトしよう。
光丘学園はアルバイト禁止だけれど、私が志望している公立高校は、そんなに校則はきつくないから、きっと大丈夫なはずだ。
「あっ、これ」
レジのお兄さんが少し大きな声を出したから、そっちに視線をやった。
さっきまでいた青陵学園の彼はもういない。
お兄さんは何やらプラスチックのカードを持ったまま、困り顔。
「どうしたんですか?」
私は興味津々で近づいた。
もしかしてさっきの彼の忘れ物かなーと期待して。
私の予感(期待)はバッチリ当たって、レジのお兄さんが「さっきのお客さんのものだと思うんですけど……」と私にカードをチラッと見せてくれた。
ウソ、青陵学園の生徒手帳ってカードなの?
カードには彼の顔写真とフルネームがバッチリ載っている。
私は色めきたって、「私っ、私が追いかけて届けます!」と立候補した。
「あ、えーっと……。君は?」
「ハイッ。私の名前は水森利世! さっきの彼とはさっきしゃべったんで、大丈夫です!」
アルバイトの店員らしいお兄さんは、一瞬私にカードを預けることを躊躇した。
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