1.シンデレラ、王子様と出会う

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だから私は自分の名前を名乗り、勢いで店員さんからカードを奪った。 何が大丈夫なのか突っ込まれても困るから、返事が来る前に、すばやく。 「じゃ、行ってきます!」 キリッと敬礼をして、店を駆け出した。 早く追いかけないと、見失ってしまう。 そうしたら私は彼の学生証をお店に戻しに来ないといけないし、彼と会う機会が二度と失われてしまう。 せっかくのイケメンのお兄さんっ! もう一回話したい!! 陸上部に入ってる私は全力ダッシュ。 同クラ男子が名付けた『こけしダッシュ』で、人込みを縫うように走った。 エスカレーターの下りに乗っていく青緑のブレザーを見つけて、心の中でガッツポーズをする。 本当はエスカレーターを駆け下りて捕まえたかったけれど、駅じゃないエスカレーターは片側が空いているわけでもなく、私はその場で地団駄を踏む思いでエスカレーターに乗っていた。 下に着くのを待っている間に手元のカードを確認する。 これは個人情報を盗むんじゃない。確認だよ、あくまで確認。 誰にするでもなくそんな言い訳を心の中でして、カードに書かれている名前を見つめた。
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