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◇◇◇◇
「行ってしまったな。意気揚々と…」
「コハクさん。リードが戻ってくるまで家にいよう?魚食べないと作業も進まないんだよ。」
「ん、ああ。リードは、優しいんだな。」
「え?あ~そうかな?普通じゃない?」
張り切って山を下っていくリードを見送って、コハクさんと一緒に家への帰路につく。リードが優しい?わかってはいるけど、素直に認めるのは何かしゃくだった。
「ふふ。アスリーはリードと2人で旅をしているんだろう?いろんな場所を見てきたのか?」
「まだ数ヶ月程度だけど、もっと長いこと一緒にいるような気がする。それだけ内容の濃い日がたくさんあったからね…。場所だけで言えば、いろいろ見てきたかな。」
「…楽しかったか?」
「まぁ…腹立つことの方が多かった気がするけど、うん。あいつと旅するのは、楽しいんだよ。」
本人には絶対言ってやらないけど。目的も目標もない旅だけど、リードと一緒なら、それも悪くないと思っている自分がいるのも確か。まぁ、何だかんだお世話になってるし。
「アスリーは、リードのことが好きなんだな。」
「…みんな同じこと言うけど。違うから!私は別に…!」
「リードの話しをする時のアスリーは楽しそうだ。それに、顔がニヤけてたぞ?」
「え!?うそ!?」
「嘘だ。」
コハクさんが綺麗な顔でクスクス笑う。…か、からかわれた!?
「な、なんなんだよー!もう!」
「ふふ、すまない。素直になれないアスリーは可愛いな、と思ってな。」
「くっ…!私はいつでも素直なんだよ!」
「はいはい。さ、お茶をいれるから座っててくれ。」
コハクさんは微笑みながら家に入り、お茶をいれにいってしまった。美人だからって何でも許されると思って…まあ、許すんだけど。…少しは、心を開いてきてくれたってことなのかな。
「おまたせ。もう、アスリーの好みの味もわかってしまったな。」
「何日もいるからね。私も、コハクさんの入れるお茶、気にいっちゃった。」
「ああ。私でよければ、いつでもいれてあげるよ。」
綺麗…コハクさんの笑顔を見るたびに思う。神様って、案外使えない。こんな素敵な人に、辛い思いばかりさせるんだから。無能にも程がある。…もう十分、辛い思いはしてきたじゃん。…助けて、あげたいなぁ。
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