廃墟に化物は憑き物だ

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「に、逃げるぞっ!!」 「お、おお!」 いくらなんでも化物が出て来りゃ、そりゃ思考停止にもなるわな。 「零、自分そんな事出来たんかいな!?」 「悪ぃけど、ちょっと足止めするくらいしか持たないぞ!あの化物知能はないけど単純な力は強いだろうから、すぐ破られる!全力で死ぬ気で走れ!」 後ろでバリンッて結界が破られた音が響いた。ちっとも足止めになってねぇ!反射的に振り返りそうになる彩奈に、 「振り返るな!走れ!」 不気味な奇声を上げながら、一気に距離を詰められる。このままじゃ全員殺られる…! 「おいっ!化物!!こっちだ!俺を喰ってみろ!」 「零!?」 三人の驚いた声が上がる。皆とは反対側に曲がって、大声で化物の気を俺に向ける。人数の多い皆の方に行こうとしたけど、俺が声を上げた事で化物の視界が俺を捉えた。奴に少しでも知能があるなら、集団からはぐれた俺を追うはず。追ってくれ。 【零!?何しとんねや!?】 「俺が囮になるから、雨は皆が外に行けるまで守ってくれ!」 【せ、せやけど…!】 「俺は大丈夫だから。他に化物がいないとは限らないし、行ってくれ!」 【アホ抜かせ…!くっそ、必ず俺が行くまで無事でいるんやぞ!】 「分かってるつーの!」 ひらりと俺の肩から身を翻す。雨がいればあいつ等は大丈夫だ。問題は俺だな…。逃げ切れる自信がねぇ。足が速い訳でもねぇし。体力と持久力に自信ないし。 それでも、こいつを引きつける為に走るしかねぇだろ。俺が殺られたら、次はあいつ等だ。 「はっ、はぁはぁはぁ、はぁっ…!!なんで俺、こんな目に遭ってんだよ…!俺は怖いのが大っ嫌いなんだよ!俺を食べたらお前絶対呪い殺してやる!」 化物に言ったって仕方ないけど。 針山を探したいけど、今は自分の事だけで手一杯だから、許してくれ針山。もしかしたら裕司達と合流して外に出てるかも。それか、一人で外に出てくれてたらいいな。 そんな悠長に考えてたら、悠長な願望を打ち砕く惨状が、目の前に広がった。 「針山…………?」
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