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「お、おい針山……?なぁ嘘だろ…?返事してくれよ。怖い事は大嫌いだっていつも言ってるじゃんか…。そんな怖い冗談やめろよ!いくら俺でも怒るぞ!」
こんな事言ったってもう無駄なのに。目の前にいるのは最早、針山の姿をした化物なのに。脳は速く逃げろと冷静に警鐘を鳴らすけど、感情が追いつかない。
喰い千切られた左頬。骨まで見えている右腕。何処かしこも、喰われた痕。
俺のせいだ。変な気配がするって分かってたのに止めなかった、俺のせい。
ごめん。針山、ごめん。俺のせいだ。
ドッと、後ろから凄まじい衝撃。
あーあ、当然だよな。追いかけられてるのに立ち止まったら、そりゃあ当然、襲われる。凄まじい力で床に叩きつけられて、抵抗どころか息さえ出来ない。
「げほっ…!がっ……ああぁぁあぁあああああああぁ!!」
首筋に鋭い痛みが走った後、聴いたことのない嫌な音と共に首筋の肉が喰い千切られたのが分かった。目を真っ赤に染めて血をだらだらと溢しながら、左腕に針山も喰らい付いてきた。
あまりの痛みに、悲鳴さえ出ない。このまま死んだら、針山と同じように、俺も人を喰うようになるんだろうな。そもそも噛まれた時点で終わりだろうし。
ごめん、皆。ごめん、雨。頼むから俺の心配をして戻って来ないでくれ。
化物になって人を喰う前に、殺してくれる祓い師がいてくれたらいいなぁ。
ああ、母ちゃんも父ちゃんも本当ごめん。
…………親不孝な俺を殺すつもりで全力で素手で殴ってぶっ飛ばす母ちゃんの図が、脳裏に鮮明に浮かんだ。
やっべぇ怖ぇ!化物になっても死んでる場合じゃねぇ!母ちゃんに殺される!母ちゃん怖い!
「くっそ…退けよお前ら!母ちゃんどんだけ怖いか知らねぇだろ!」
とは言って抵抗したところで、どうにもならない訳で。母ちゃんにボッコボコにされるしかなさそう……。
【はっ……はは、はははは…はっ、あははははははははははははははっ!!】
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