12人が本棚に入れています
本棚に追加
「おっ、零ちゃんと来たんや!怖気づいて来おへんかと思ってた!」
ベリーショートの黒髪を揺らして手を振りながら明るく笑う結衣。秋成 結衣(あきな ゆい)の隣でほわんと笑ってる彌奴岸 彩奈(みなきし あやな)。
二人共大学で知り合って、そのまま意気投合して友達になった。
結衣と彩奈に手を振りながら、重苦しい気配を漂わせる山に目を向ける。この山って、こんな山だったっけ…?
「なんだよ零、もう怖がってんのか?廃墟ホテルはまだ見えてないのに」
「怖くて悪かったな!そもそも暗いのが怖いんだよ!」
針山が腕を胸の前で垂らして幽霊の真似をする。夜は妖怪や霊達の、オニの時間。妖怪や霊、神獣や神をまとめてオニと呼んでる。
お前は視えないからそうやって気楽でいれるんだよ。幽霊の真似をしてるお前を覗きこんでるぞ、首が半分千切れた女の霊が!後、三メートルはありそうな一つ目の鬼っぽい奴も!
もうやだ……来たばっかだけど帰りたい。
【なんや、泣きそうな顔しよって。奴らは害を及ぼすような奴らやない。それくらい分かるやろ?】
右肩に器用に乗ってる雨。分かってるけど、怖いもんは怖いじゃんか。
「零さん、また何か見えちゃってるんですか?」
彩奈がにこにこしながら訊いて来た。彩奈も結衣も信じてるのか分からないけど、視えてることは知ってる。
「幽霊とかいる訳ねぇじゃん!怖がるからそれっぽく見えちまうんだよ!」
ああ針山。お前が羨ましいよ。オニを前にそんなこと言えるのが。俺だったら喰われそうで怖いわ。
「妖怪とかロマンチックでいいじゃないですか。いないって頭ごなしに否定するのは寂しいですよ」
こいつらの姿を視てもロマンチックって言いそうだな彩奈って。
「まぁ楽しけりゃいてもいなくてもどっちでもいいわ」
「そういえば祐司は?」
「祐司ならコンビニに飲みもん買いに行った。お、噂しとったら帰って来た」
コンビニの袋を手に帰って来た祐司は、何故か動物の霊を連れて帰って来た。
最初のコメントを投稿しよう!