廃墟に化物は憑き物だ

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「おっ、零ちゃんと来たんや!怖気づいて来おへんかと思ってた!」 ベリーショートの黒髪を揺らして手を振りながら明るく笑う結衣。秋成 結衣(あきな ゆい)の隣でほわんと笑ってる彌奴岸 彩奈(みなきし あやな)。 二人共大学で知り合って、そのまま意気投合して友達になった。 結衣と彩奈に手を振りながら、重苦しい気配を漂わせる山に目を向ける。この山って、こんな山だったっけ…? 「なんだよ零、もう怖がってんのか?廃墟ホテルはまだ見えてないのに」 「怖くて悪かったな!そもそも暗いのが怖いんだよ!」 針山が腕を胸の前で垂らして幽霊の真似をする。夜は妖怪や霊達の、オニの時間。妖怪や霊、神獣や神をまとめてオニと呼んでる。 お前は視えないからそうやって気楽でいれるんだよ。幽霊の真似をしてるお前を覗きこんでるぞ、首が半分千切れた女の霊が!後、三メートルはありそうな一つ目の鬼っぽい奴も! もうやだ……来たばっかだけど帰りたい。 【なんや、泣きそうな顔しよって。奴らは害を及ぼすような奴らやない。それくらい分かるやろ?】 右肩に器用に乗ってる雨。分かってるけど、怖いもんは怖いじゃんか。 「零さん、また何か見えちゃってるんですか?」 彩奈がにこにこしながら訊いて来た。彩奈も結衣も信じてるのか分からないけど、視えてることは知ってる。 「幽霊とかいる訳ねぇじゃん!怖がるからそれっぽく見えちまうんだよ!」 ああ針山。お前が羨ましいよ。オニを前にそんなこと言えるのが。俺だったら喰われそうで怖いわ。 「妖怪とかロマンチックでいいじゃないですか。いないって頭ごなしに否定するのは寂しいですよ」 こいつらの姿を視てもロマンチックって言いそうだな彩奈って。 「まぁ楽しけりゃいてもいなくてもどっちでもいいわ」 「そういえば祐司は?」 「祐司ならコンビニに飲みもん買いに行った。お、噂しとったら帰って来た」 コンビニの袋を手に帰って来た祐司は、何故か動物の霊を連れて帰って来た。
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