廃墟に化物は憑き物だ

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「零……まさか、当たり…か?」 裕司が心配そうに訊いてくる。 身体が震える。嗚呼嫌だ。怖い怖い、怖い。なんでいつもこうなんだ。視えるのは俺だけなのに、悪いモノの気配を感じるといつもこう。身体が竦んで動けなくなるんだ。 【零!しっかりせんかい!俺が守ったるさかい、友達はお前が誘導しぃ!したくてもこいつ等には視えへんからな。癪やけど、お前の方が気配を感じ取るの上手いんや。最初っから止めとくべきやった】 【そうよ!しっかりしないと尻触りまくるわよ!】 うわ、ビッチに触りまくられるのは勘弁。そうだ。俺がしっかりしないと。悪いモノがいるかもしれないって分かってたのに、止められなかった俺の責任だ。 「うん、悪寒が止まらないし、強いから確実にいる。…………てか、近づいて来てる…?」 ねっとりとした気配が、ずるずると這い摺りながら俺達を目指して来てるのを感じる。 「それならはよ逃げな。こういう時の零の霊感って無駄にめっちゃ当たるやん」 「そうですね。命あっての物種ですし。ここは逃げましょう」 何だろう。逞しいと言うか、こいつ等めっちゃ順応性高くね?過去に一回だけ悪霊に遭遇した事あるけど、たった一回でここまで冷静に逃げるって判断出来るか?いや、そもそも一回悪霊に遭遇してんだから廃墟なんて探索しようなんて思うなよ。 「よし、針山。そういう訳だから逃げるぞ……って、あれ……?針山…?」 裕司が振り返った先を、皆同時に振り返る。そこには、人の形をした、何かがいた。
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